僕の知る限り、海外の偉大な口笛奏者といえば、オランダのヒールト・シャトロー、アメリカのミッチ・ハイダー、ウィスリング・トムそしてロン・マクロービィが挙げられます。このうちヒールトとミッチは来年2018年の口笛世界大会(WWC2018)のために揃って来日しますが、ロン・マクロービィは残念なことに2002年に急逝されています。
幸いなことに彼の演奏はいくつか聞く事はできますが、奏法などについての情報はあまり多くありません。僕が初めてアメリカの大会に参加したのが2005年なので、直接お会いする事はかないませんでしたが、親交のあった方から貴重なアドバイスが書かれた文章を入手したので、翻訳してご紹介します。
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- 【発音(イントネーション)】
自分にとって発音は、演奏中に音程に集中するために非常に重要であり、習得すべきことの上位に位置しなければならない。
- 【息継ぎ】
不適切な箇所での息継ぎは、間違った表現の原因となる。歌と同じように、口笛演奏での息継ぎは、音楽的に適切でなければならない。息切れなどは演奏を台無しにする。
- 【ビブラート】
私の見解では、ビブラートは最小限にとどめるべきである。多すぎるビブラートは素人っぽい。ホルン奏者の演奏を参考にすると良い。彼はシンプルに、心地よく、やり過ぎない形を示してくれる。
- 【装飾音や装飾フレーズ】
装飾音や装飾フレーズは腕前を示すことができるが、多すぎるとやりすぎになる。別の言い方をすれば「”テンダリー”の途中で鳥の鳴き真似を入れるな」という事。ちょっとした即興フレーズは、メロディーを素晴らしいものにしたり、ぶち壊したりもする。シンプルに、そしてセンス良く保つべき。
- 【伴奏音源】
伴奏音源は、決して過度に複雑なものであってはならない。不適切なものは演奏者を通り越えて置き去りにしてしまう。その内容は、演奏者の実力に合ったものでなければならず、テンポも同様に重要である。
- 【唇のためにできること】
自分は(リップクリームなど)特に何も使用しないが、問題はない。曲と曲の合間に水を少し含むが、曲の途中では飲まない!
- 【音楽性】
最後に、音楽性は決してトリルやビブラートで誤魔化されるべきではない。他のすべての芸術と同様に、感性が決め手となる。
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ミッチ・ハイダー氏の記事より:
ロン・マクロービィは過去、そして現在においても最も偉大なジャズ口笛奏者である。クラリネットを長年にわたり演奏し、そして1981年にプロ口笛奏者となった。1982年のモントレージャズフェスティバルではウッディー・ヘルマンバンドと演奏。4枚のアルバムをリリース。アメリカの数多くのテレビ番組に出演したほか、世界中で演奏し、ワークショップも開催した。2002年永眠。