だいぶ昔の話しですが、所属している合唱団の演奏ツアーで、オーストリアのザルツブルグ大聖堂でモーツァルトのレクイエムを歌う機会がありました。
とても天井の高い、大きな教会なので、残響が16秒もあるとのこと。
聴く方はそうでもないらしいですが、歌う側は、オケや他のパートの音がワンワン反響して、何が何やら状態。そうなると指揮者の棒だけが頼りでした。
そんな中で一つ発見しました。トゥッティで「Rex!」と歌って少し間があって、また「Rex!」とやるところがあるのですが、その間で、「Rex!」が天井で跳ね返って聞こえてきたのです。
普通のコンサートホールでは何回も演奏している曲でしたが、ああいうところでやって初めて「ああ、そういうことか」と気がつきました。勝手な推測ですが、モーツァルトはこういう残響も計算していたのではないかと思います。
別のツアーでは、ケルンでドイツの合唱団と合同でバッハのマタイ受難曲を歌ったこともありました。
これも少なくとも10回以上は本番を経験し、全曲諳譜していましたが、ドイツの合唱団はじつに細かいところまで「この曲を知り尽くしている」というのがよく伝わってきて、とても勉強になったのを憶えています。きっとこういう音楽には子どものころから接していて、「ここはこうする」というのが感覚で染みついているのだと思いました。
こういったクラシック音楽を合唱で歌う場合には、取りにくい音程やリズムに苦労することも少なくありません。楽器と違って(楽器でも基本的にはそうだと思いますが)頭の中にちゃんとスケールが出来ていないと音が取れません。これはくちぶえでも同じ事で、とてもよい訓練になります。(くちぶえのほうが倍音がほとんどない分、音程にはもっとシビアだと思います)
一方、練習の過程では作曲家の仕事をつぶさに観察できたり、素晴らしい指導者や指揮者の指示で、どんどん音楽が変わっていく場面に立ち会ったり、得難い体験がいくつもあります。
音大を出ていなくても、楽譜がちょっとくらい苦手でも、これだけクラシック音楽と深く接することのできる機会は、他にはなかなかないと思います。
そういったことに興味のある方は「オーケストラバックによる合唱」に参加することをぜひお薦めします。
もちろんくちぶえの演奏にも様々な面でとてもプラスになると思います。私はまだまださっぱり・・・ですが、こういった経験に助けられている部分はとても大きいです。
(おまけ)
Requiem K.626 – 2. Kyrie / W. A. Mozart
Requiem K.626 – 4. Tuba mirum / W. A. Mozart
Requiem K.626 – 5. Rex tremendae / W. A. Mozart