くちぶえ弾き吹き入門 – 3. 練習編 – c. くちぶえも大事

 ウクレレ/ギターの話題が続いたので、くちぶえについても取り上げてみます。くちぶえについては弾き吹きでも生伴奏でも、特になにかやり方が変わるわけではないので、弾き吹き以外の場合にも参考になるかと思います。

 

i. 息継ぎ

息継ぎのタイミング

 息継ぎは、ウォーブリングなどに比べると地味ですが、表現と密接に関わってくる重要な技術です。コンテストで上位に入ってくる人たちは、ほぼ例外なく息継ぎが上手です。

 声楽なども同じだと思いますが、呼吸は「吐く」ことより「吸う」ことの方が難しいです。息継ぎはその「吸う」動作ですが、細かく言うと「吸い始め」と「吸い終わり」があります。吸い始めのタイミングは通常フレーズの終わりで音が途切れたところになり、吸い終わりのタイミングは次の音を出し始めるほんの少し前になります。

 まず優先したいのが吸い終わりのタイミングです。これが遅れると次の音を出すのが遅れて、意図せず歌い出しがもったりした演奏になってしまいます。

 息継ぎを素早く行うのはやはり訓練が必要なので、初めは思ったより時間が掛かってしまうかもしれません。もしタイミング内で息継ぎが終わらない場合は、当面はテンポを落とすか、または次善の策で少し早めに息継ぎを始める方がいいです。テンポがずれて聞こえるよりは前の音が少し早めに消えた方がまだ目立ちにくいからです。

素早い息継ぎのためには

 息継ぎを素早く行うコツの一つは、息継ぎの前後で姿勢を変えないことです。音を出しているときの身体の状態をできるだけ変えずに、そのまま息を吸います。姿勢が変わってしまうとそれだけ無駄な動きが入り、時間と効率のロスになります。

 もう一つのコツは、息継ぎの前で、肺に残っている空気をできるだけ吐ききることです。早い曲など、必ずしもそうできない場合もありますが、いつも中途半端に空気が残っている状態で吸い始めていると、身体にも良くありません。

 息を吸うときは、吐ききった状態のお腹をへこませている腹筋を緩めて、同時に上に持ち上がった横隔膜も緩めて素早くストッと落とします。上に持ち上がった内臓も重力の力で下に落とすようにすれば力は要りません。
 その時、くれぐれも背中を丸めたり、下を向いたりしないよう、胸を開いたままにすることを忘れないでください。

 練習の時はうまく出来ても、いざ本番の演奏の時には緊張して呼吸が浅くなっていることがあるので、演奏中も時々自分がちゃんと深い呼吸をしているかチェックしてみてください。

 

ii. ロングトーン

身体をコントロールする

 口笛は身体が楽器なので、自分の身体をより完全にコントロールするつもりで練習します。ロングトーンの練習はそれがどの程度出来ているかを自分自身で確かめるのに、とてもいい方法です。
 座ったままでも出来ますが、出来ればたまには立ってやったほうがいいです。その方がより深い呼吸が出来ます。

まずは口笛の音を出さずに練習

 まずは口笛の音を出さずにやります。(音を出すとそちらに神経が行ってしまうので)

  • 姿勢を整え、鼻から目一杯空気を吸います。
  • 唇をすぼめて空気に軽く抵抗をかけ、但し口笛の音は出さずにゆっくり息を吐きます。
  • 吐いている間の秒数を計ってください。最初は4秒、慣れたら7秒以上吹き続けられるように練習します。

 7秒は長いようですが「うさぎ追いし」の故郷の曲のワンフレーズがだいたい7秒です。そこまでできればたいがいの曲で息が持つはずです。
 すぐ息がなくなってしまう場合は、息を出す前に肺に空気を十分に吸えていないことが多いです。横隔膜が十分下がっていないのが原因かもしれません。また、自分ではこれで一杯、と思っても、姿勢が悪かったり、どこかに余分な力が入っていると空気が入ってきません。リラックスしてやってみてください。

次に口笛の音を出して

 次に口笛の音を出して同じことをやります。秒数はやはり最初は4秒、慣れたら7秒を目安にしてください。出しやすい音の高さでかまいませんが、少し高めの音の方が息が続きます。音量は大きくもなく小さくもなく、中間ほどです。
 この練習ではビブラートを一切かけないようにしてください。大事なのは音高をできるだけ一定に、そして音量もできるだけ均一に保つことです。音が出た瞬間から消える瞬間まで、少しの揺るぎもなく一本の細い線のように安定させてください。特に出だしでシャクったりして音程を変えないように注意します。

 これを完璧にやるのは意外と難しいものなので、最初からそんなにうまく出来なくてもがっかりする必要はありません。音程もそうですが、音量のコントロールも難しいです。

自分の身体に神経を集中

 息の出し始めは主に横隔膜周りを徐々に脱力していきますが、そもそも筋肉は脱力方向で微妙なコントロールをするのがちょっと苦手です。
 そして後半は腹筋の収縮を使って、残った空気を押し出す動きに徐々に移っていきますが、このバトンタッチをつなぎ目なくスムーズにやるのがポイントです。今自分の身体がどう動いているのか、神経を集中しながら音を出します。

 吹いている途中で音が一瞬途切れることもあります。これは口の中や唇のコンディションが原因かもしれません。水分を取ったり、適量のリップクリームなどでケアします。また、唇の先の方は多少ざらざらしているので、そこに空気があたると音が出にくかったりかすれたりします。唇を僅かにめくり加減ですぼめて唇の少し内側の柔らかいところを使うといいかもしれません。

ロングトーンの技術を土台に

 「ピー」という、アラームのような電子的な音になったら上手に出来たしるしです。実際の音楽の中で、そのようなやや無機質な音を使う場面はあまりありませんが、たとえば自転車の運転でも、まっすぐ走れないのにカーブの運転は出来ないように、この安定したロングトーンの技術を土台にすることで、様々な表現を載せることが出来るようになります。

 最初のうちはまだ身体が楽器になっていません。楽器にするためにはそれなりの筋力柔軟性が必要で、特に横隔膜とその周辺の筋肉の動きが重要ですが、普通は最初からそんなによくは動きません。それは毎日このような練習をすることで少しずつ変わっていきます。一日二日で出来なくても、どうぞ長い目で見てください。

 

iii. キレイな音を目指して

イメージをはっきり持つ

 いい演奏というのは最初の数秒のキレイな音で感動を与えます。キレイな音というのは音楽を演奏するにあたって基本的かつ最重要の課題だと思います。ではキレイな音はどうすれば出せるのでしょうか。まず大事なのは自分の出したいキレイな音とはどういう音なのか、イメージをはっきり持つことだと思います。

 自分の出したいキレイな音とはどういう音か。おそらく人によってイメージするものが多少違うでしょうが、キレイな音のイメージは何もないところから生まれるのではなくて、例えばだれかの演奏を聴いて、その音をキレイだと感じ、それが自分のキレイな音のイメージの原型になるのではないでしょうか。そして練習と研究を重ね、自分の出す音が自分の理想に近づくように努力するのだと思います。

音を安定させる

 ここでは、そのキレイな音のイメージが人によって差がある前提で、ごく基本的な部分の音作りについてのみ書きます。

 まず始めは、ビブラートやポルタメントを一切なくした状態でキレイな音を目指しましょう。ビブラートやポルタメントはあくまで装飾であって、それ自体がキレイな音を作っているわけではないと考えます。最初は自分の音が頼りなく不安定に聞こえるかもしれませんが、ロングトーン(前述)などの練習で次第に安定して、音に芯が入ってくるようになります。

 キレイな音のためには音が安定していることは大事な要素です。音量や音程が意味もなくフラフラしてはうまくないです。

iv. 高音域を広げよう

高音の出し方

 高音は練習次第でだれでもだんだん高い音が出るようになってきます。個人差はありますが「ミ」(E7)くらいまでは何年もかからず出るようになるのではないでしょうか。
 そこから先は少し習得のスピードはダウンするかもしれませんが、諦めずに練習を続けてください。

喉を開く

 高音はまずリラックスすることが大事です。特に「喉」や「鎖骨周り」が変に緊張しやすいので、力を抜いてゆったりとしてください。特に喉を狭くしないように要注意です。
 喉を開くには「あくび」をするときの口内と喉をイメージするといいです。なるべく口を大きく開けてあくびをしてみてください。口笛を吹くときは口を開けられませんが、目の下あたりの「頬の肉」を持ち上げる感覚を再現するといいです。

 一足飛びに高い音を出そうとすると変な力が入ったり無理なやり方になりがちなので、トライするのは自分の限界より「半音だけ」高い音までにしてください。

 ある高さから上の音が出ないと言うことは、そこまでと「同じ吹き方では出ない」と言うことなので、何を変えたらいいのか考える必要があります。また、ひょっとして元々すこし下の方の音の出し方も改善の余地があったのかもしれません。

チェックポイント

  • リラックス(あくび)
  • 口先の穴の大きさをなるべく小さくする
  • 口先の穴の位置を上下と前後に微妙に変えてみる
  • 口先の穴の向きを少し上向き、水平、少し下向きに変えてみる
  • 唇の先に少し力を入れる
  • 舌先に少し力を入れる
  • 舌の上の空間をできるだけ小さくする

練習方法

 練習は次のようにします。くれぐれも喉などには力を入れないように注意してください。

  • 上限の高さの音を長く延ばし、それより半音高い音にゆっくり丁寧にポルタメントします。それを4回くらい繰り返したら少し休んで大口のあくびをし、また同じ練習をします。
  • ゆっくりめの曲を練習台として、上限より半音高い音が最高音になるように移調して練習します。伴奏はなくて構いません。半音か全音下から最高音に上がるようなメロディーなら理想的です。
  • 上限より半音高い音をいきなり出して伸ばします。

 高音の練習は何日か間を空けるとせっかくコツをつかみかけても元に戻ってしまうので、毎日、できれば一日何回かした方がいいです。

 

v. 低音域を広げよう

低音の出し方

 前にも触れたように、口笛は低音域で音量を出すのが苦手です。低音域はマイクを近づけるなど、マイクの使い方が重要になってきますが、それでもある程度の生音が出ていないとマイクに音が入っていきません。

 低音は頭蓋骨の大きさである程度限界が決まってくるように思いますが、もしそこまで使い切っていないとすればまだ下げられる余地があるかもしれません。

  • やはり「あくび」のイメージが大事です。口のすこし奥の方に大きな卵か何かが入っているイメージで、口内の容積をできるだけ大きくします。
  • 高音の時とは逆に、口先の穴は音が出る範囲でなるべく大きくして、口先もできるだけ突き出すようにします。鼻の下をちょっと伸ばして、少し下の方に口先を伸ばすのがコツです。
  • その状態で舌の形をいろいろ変えてみて、低い音がよく出る形を探します。
  • 音が出たら、フクロウの鳴き真似をやって練習します。実際のフクロウとちょっと違うかもしれませんが、「ホ〜ゥ、ホーゥ」と最後の方が低い音にしてみてください。

 高音と同様、練習はなるべく毎日やってみてください。

 

 次の章では、ウクレレ/ギターの次の段階の弾き方を取り上げてみます。

 

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