くちぶえ弾き吹き入門 – 1. プロローグ

a.「弾き吹き」ってなに?

弾き吹きとは

 弾き吹きとは、口笛と楽器を一人で同時に演奏する演奏スタイルです。例えばギターにしろピアノにしろ、一般的なソロプレイとなると、メロディーも伴奏も一つの楽器で演奏しますが、それは結構難しいものです。早くても数ヶ月、多くは数年かけて練習を積んでやっと少しずつサマになってくる感じだと思います。

 ところが、弾き吹きの場合はあくまでメインは口笛なので、楽器は最低限の伴奏だけで頑張らなくていい、となればはるかに敷居は低くなります。やさしい曲なら数分〜数時間で結構サマになってしまうのが弾き吹きです。

 また、ありがたいことに歌声と違って口笛の音には年齢は出ません。何歳からでも始められて、ひとりでも出来て、しかも最も敷居の低い類の演奏スタイルです。今の時代にぴったりではないでしょうか。

弾き吹きと弾き語りの違い

 演奏技術として弾き吹きに一番近いのが、ギターやピアノなどを使っての「弾き語り」です。弾き語りもとても奥深い世界で、弾き吹きをやる上で参考になることも多いですが、弾き語りは歌なので基本的に「言葉」があります。言葉が創り出す「ストーリー」により、具体的なイメージを伴って曲が展開していきます。同じメロディーの繰り返しでも、歌詞が変わるので演奏として成り立ちますが、弾き吹きの場合は同じ繰り返しになるのを避ける必要があります。

 一方で、人間の歌声の表現力は圧倒的なものがあり、様々な楽器はその歌声の表現力を再現するために作られた、という話があるほどです。その歌声を使わず器楽だけで演奏する場合には、歌声に頼らずに音楽の魅力を引き出すために、歌曲とはまた違った、様々なアレンジ上の工夫も必要になってきます。
 このように、技術的にはとても似ていますが、弾き吹きは純粋に音だけのとても抽象的な「器楽」の世界になり、表現の目指すところは全くの別世界の面白さがあります。

 


弾き吹きサンプル(ウクレレ)

The Merry Farmers / R. Schumann
楽しき農夫 / シューマン

  • 弾き吹きを始めてから半年〜1年くらいの難易度です。
  • コード名の右の数字は、押さえるフレット位置です。左から4,3,2,1弦。
  • 「D7」(2223)が難しければ(2020)か「D」(2220)でもok。
  • ウクレレは貸し出し用のコンサートウクレレ「オスカーシュミットOU2

 


弾き吹きサンプル(ガットギター)

When The Night is Coming / Asei Kobayashi
夜が来る / 小林亜星

  • 弾き吹きを始めてから1〜2年くらいの難易度です。
  • コード名の右の数字は、押さえるフレット位置です。左から6,5,4,3,2,1弦。

 


 

b.「大会」ってなに?

大会とは

 口笛にも大会があるんです。アメリカ・ノースカロライナ州ルイスバーグで過去40回近く開催され、いまでは日本で隔年開催されている「口笛世界大会(WWC)」や、やはり隔年開催されている「マスターズ国際口笛音楽フェスティバル(MMW)」(ロサンゼルス)などがあります。どちらも弾き吹き部門があり、事前の審査を通過した者が本選に出場できるようになっています。また、弾き吹き部門はありませんでしたが2020年には初のオンラインのコンテスト「Global Whistling Championship(GWC)も開催されています。

 音楽のコンテストなので、緊張感と気迫に満ちた、ピリピリした雰囲気ももちろんありますが、口笛の大会はそれだけではありません。普段の生活ではほかの口笛吹きと接する機会もほとんどないからでしょうか、会場はどこか同窓会のような雰囲気があります。特に長い歴史のあるアメリカの大会では、演奏はもとより、毎回そこに来ることを楽しみにされている方が多くいました。そしてひとたび舞台に立てば(演奏はある意味自分をさらけ出すようなものなので)うまいへた関係なく、皆が話しかけてきます。

エントリーのすすめ

 大会に参加するとなれば、誰しも本番でいい演奏をして、出来れば入賞したいと思うのは当然ですが、大会に参加する意義は結果だけではないと思います。入賞してもしなくても、たとえ事前審査に通らなかったとしても、大会に向けてやってきた練習こそが価値があるのではないでしょうか。

 他の人と比べるのもいいですが、あまり気にしすぎると嫌になってしまうかもしれません。大事なのは過去の自分と比べること。WWCでは事前の審査でも本番でもすべて「何人中何位」という結果を返しています。毎回エントリーすれば、自分の順位の変遷も一つの目安にもなるかもしれません。

 というわけで、演奏に自信があってもなくても、とにかくエントリーしてみることをおすすめします。このサイトを見て、少しでも弾き吹きができるようになったら、ぜひエントリーしてみてください。

 

次章>