Whistle-pedia

2017.2.14 updated

くちぶえ事典 Whistle-pedia

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アンプラグド

一般にマイクやスピーカなどの音響装置を使わないで演奏すること。口笛は他の楽器に比べ音量が小さいので、通常、演奏には音響装置を必要とするが、マイクを通すと失われるニュアンスも有るので、静かで小さい場所ならアンプラグドもいいかもしれない。アンプラグドの場合は、低音域の音量不足や、フォルテのときの擦過音、伴奏楽器との音量バランスの問題に注意する必要がある。例えば口笛フォルテに対して、伴奏がメゾピアノで音量的にはバランスしたとしても、表現的に大丈夫か、など。また、条件によっては逆に伴奏より口笛のほうが通る場合もあり、席によって聴こえ方がかなり違ってしまうことも。

ウィッスル・ウィスリング・ウィスラー

このサイトではそれぞれ「口笛を吹く」・「口笛」・「口笛吹き」の意味で使っている。但し、一般に英語で「ウィッスル」というと口笛だけでなく、指笛、手笛やある種の笛なども含まれるようである。発音は「ウィスー」が近く「ホイッスル」では通じないかも知れない。また単に英語話者に「ウィスラー」というとスポーツの審判のようなものを連想されてしまうかも知れないので補足説明が必要かも。

ウォーブリング奏法

口笛特有の用語。音高をポルタメントせずに階段状に、かつ切れ目なく変える奏法。これの応用としてトリル奏法がある。クラシックなどの技巧的な器楽曲の演奏には特に有用で、ポピュラーやジャズなどのちょっとした装飾音でも多用される。「のどウォーブリング」と「舌ウォーブリング」に大別される。「のどウォーブリング」は比較的習得に時間がかかるが、発音がクリアで音程感があり、中〜高音域を得意とする。「舌ウォーブリング」は切り替わりに独特のインパクトがあり、低〜中音域を得意とする。一方、通常奏法で足りる場合も多いので、他の技術で代替できたり、より自然だったりする場合は必須のスキルではないと考える。

【参照】

金づちを持つと全て釘に見える

ウォーブル・グリッサンド(またはスライド奏法)

造語。別名「スライド奏法」。ウォーブリング奏法を応用したグリッサンド。ロン・マクロービィやマイケル・ブラビンが多用する細かくて早い連続したパッセージの奏法を指す。この場合、息の強さは概ね一定である。また、半音、全音だけでなく、それを超える度数の跳躍も含む。なお、「のどタンギング」によるグリッサンドは奏法的に全く異なる上、表現上も多少なりとも音の切り替わりの際に切れ目ないし強弱が生じるので、このグリッサンドとは区別する必要がある。ちなみに、一般に「ポルタメント」は音高が無段階に変わるものを指し、階段状に変化する「グリッサンド」とは区別される。

【参照】

Mayberry R.F.D. – Ron McCroby

音域

口笛の音域は一般には1〜2オクターブ程度。2オクターブあれば大抵の歌曲は演奏できる。コンテストに出るような奏者はC5〜C8(中央ド=C4)の3オクターブ、あるいはそれ以上の音域を持つことがある。選曲上、有利ではあるが必須ではない。声楽ほど性別や年齢による差はないが、女性や子どもの方がやや高音域側に寄る印象がある。音域的にはピッコロやソプラノリコーダーと重なるが、一般にC6以下の低音域は音量があまり出ない。逆にC7以上の高音域は音量が出過ぎて、ともすると耳障りになることがある。

音程

何はともあれ、ある程度音程が合っていないと「音楽にならない」が、口笛の場合、そこまでがなかなか難しい。弦楽器奏者などに聞くと、口笛コンテスト出場者レベルでも「厳密にいうとみんな合っていない」そうである。難しい理由としては・倍音が極端に少ないので僅かなずれでも目立つ・声と違って体の中から自分の音が伝わることがない上に・ともすると伴奏が大きくて自分の音が良く聞こえない・もちろん伴奏が良く聞こえなくてもうまくない・解放弦のような基準がないのでずれたままで行ってしまう。対策としてはモニターと伴奏のバランス調整をちゃんとやること、どちらかというと低音部の伴奏から音を取るようにイメージすること、録音やチューナーでチェックすること、あとは練習でしょうか・・・。

【参照】

WhistleTunerの使い方

カラオケ

生楽器ではなく、音源伴奏で演奏するときの音源。欧米では、そのまま「Karaoke」でも通じるし、「accompaniment」や「MMO」(Music Minus One)とも言う。口笛にはピアノ、ギター、ウクレレ、ハープなどの撥弦楽器系が合わせやすい。最近では器楽用の楽譜本にカラオケCDが付いていることがあり、音域やテンポ、アレンジなどが合えば、使えるものもある。口笛用として作られたものは現状ではほとんど無いので、他の楽器用のものを流用することになるが、フルート、アルトサックス、アルトリコーダー用のものなどは音域的には何とかなる確率が高いように思う。但し、多くは口笛よりだいぶ音量のある楽器用なので、口笛と合わせた時にバランスが悪いこともままある。出版社のサイトで視聴できるものもあるので、確認した上で購入するのがオススメ。

記譜

口笛特有の奏法にはそれ用の記法が必要と考えられるが、一般に定着したものは知る限りまだ無い。以下は独自に使用しているものの一例である。

【参照】

ウォーブリングの記譜例

吸気奏法

口笛は吹くだけではなく、吸っても音が出る。上手に使うとブレスの限界を超えた演奏が出来るが、多少音色が荒れるので曲によっては使いどころが難しい。ライブなどではあまり気にならない場合でも、レコーディングでコンデンサーマイクを使うなどすると、はっきり出てしまうことが多い。トップウィスラーでも積極的に使う人と、音色の変化を避けてほとんど使わない人に分かれる。例えばロン・マックロービィやウィスリング・トムは前者であり、ヒールト・シャトローや分山貴美子は後者である。なお、寒い季節に屋外でやったりすると鼻腔などで暖められない冷気が直接入って、のどや肺を痛めることがあるので注意が必要。

グロートーン

テナーサックスなどで音を歪ませる奏法。普通に音を出しながら「ゔ〜」と声を出す。口笛では低音域で低い声でやるとやりやすい。口笛は音が小さいので、声の「ゔ〜」のほうが大きくなりやすく、使いどころが難しいが、はまると面白いかも。

スロートノイズ

のどタンギング(別項参照)をしたときに発生する”うっ、うっ、という短いうめきのような声。場合によっては耳障りなほど大きい音がすることがある。ほとんどの場合は意識することでかなり軽減できるが、早いパッセージなどではどうしても出てしまうことがある。対策としては、声楽と同じようにお腹(呼吸)で息を切るか、スラー気味になるので曲想を妨げなければウォーブリングも有効。

立つ・座る

口笛演奏は声楽と同様に、立って演奏した方が呼吸がしやすいので、音が出しやすく持続しやすい。弾き吹きの場合、特にガットギター(クラシックギター)はマイクとの位置関係が重要で、立って演奏すると位置がずれやすく、通常は止むを得ず座って演奏することになる。個人的には、ギターにクリップオン式の超小型コンデンサーマイクを付け、立って演奏することが多い。

デュオトーン

2音を同時に出す奏法。のどウォーブリングの応用で出す方法と、唇の左右に穴を作って出す方法がある。後者は以下のムービーの最後でデモンストレーションが見られる。

【参照】

Damariscotta Helm, Tritsch-Tratsch Polka, 2009

のどタンギング

タンギングは管楽器で舌を使って音を切る奏法。くちぶえの場合は同じ効果をのどを詰めることで行うので、舌は使っていないが効果を指して”のどタンギング”と呼ぶ(ペダルがない楽器でもペダルポイントなどと言うのと同じイメージ)。スロートノイズ(別項参照)が出やすい欠点があり、多用すると喉を痛めることもあるため注意が必要。なお、管楽器と同じく、舌を使った本来のタンギングも可能であるが、音程を取らなければいけない「舌」に他のこともさせることになるので、音程、音色に影響が出やすく難易度が上がる。

ハウリング

マイクを使った口笛演奏はハウリングを起こしやすい。ひとつには、楽器と比べて音量が基本的に小さいのでゲインをあげるため。もうひとつは、かといってマイクに密着して吹くと「ボーボー」と息が入ってしまうので、少し離し気味にせざるをえず、さらにゲインをあげることになるため。
対処としては、指向性が高く、かつ感度のよいマイクを使うのが有効。
もちろん、不用意にスピーカーの方に向けない、包むように持たない、といった基本的なマイクの扱いも必要。

パッコロ (Puccolo)

ロン・マクロービィが好んで使用していた口笛演奏の別名。ピッコロを思わせる彼の音色をパッカー(Pucker、唇をすぼめる=口笛の意)とピッコロをかけて表現したと思われる。

弾き吹き

口笛を吹きながら、伴奏などを楽器演奏すること。くちぶえ奏者の分山貴美子が提唱した。口笛は歌と同様、両手が空くのでこういったことが可能。ピアノ、ウクレレ、ギターなどのコード楽器だけでなく、ヴァイオリン、パーカッションや手回しオルゴールなど様々な楽器が使用されることがある。私見ではカラオケ伴奏よりはるかに楽しいので、新しい口笛の楽しみ方としてオススメ。

ビブラート

口笛では音高を細かく上下する「縦のビブラート」と、音圧(息)の強弱で表す「前後のビブラート」がある。「縦」は比較的容易で、使い方によっては効果的だが、ピアノ・ピアニッシモの時やクリアな音を出したいときに使いづらく、また、あまり細かいビブラートにすると「UFOの飛行音」みたくなっておかしい。

魔法のくちびる

後に3連覇を達成する、オランダの口笛奏者ヒールト・シャトローが2004年の国際口笛大会で初優勝したときのドキュメンタリー。「魔法のくちびる」は日本で2005年にNHKの「地球ドラマチック」という番組で放映されたときの題名で、オリジナルは「Pucker Up, the fine art of whistling」。
現在はアマゾンでもオリジナル映像のDVDを購入可能。

【参照】

ドキュメンタリDVD「Pucker Up, the fine art of whistling」(英語・リージョンコード=1)

ルーフウィスリング(またはパラタルウィスリング)

「パラタル(Palatal)ウィスリング」とも言われ、ハッキー・タマスやドキュメンタリー「The Fine Art of Whistling(魔法のくちびる)」に登場するアーネスト・バレット、そしてIWC2009のチャンピオンのルーク・ジャンセンに代表されるスタイル。
口を開けたまま音が出てくるのが特徴。つまり普通のいわゆる「パッカー(Pucker)スタイル」の口笛と違い、唇周りで音が出ないで、上あごと舌の間に空気が通るときに音が出る。音量は普通の口笛よりさらに小さく、音域はおそらく2オクターブ行くか行かないか。運動性には優れるが擦過音が比較的大きい。普通の口笛とはクラリネットとオーボエくらい楽器の特性が異なる。なお、アーネストによるとルーフウィスリングは「のど笛」とは別物だそうである。

【参照】

国際口笛大会(IWC2011)レポート(4)3日目:予選2(ハッキー・タマスの映像リンク有り)

リップクリーム

口笛吹きにとって唇のコンディションは大事である。荒れてガサついていると綺麗な音は出ないし、割れていると演奏中に出血したりしてひどいことになる。塩気の強いもの食べ物、あまり熱いものなどに用心するなどの他に、リップクリームでのケアは欠かせない。
一種類で万能というのは難しいと思うので、使い分けが必要。まず予防として練習時や普段から重くないタイプを塗っておく。荒れてきた、割れてきそう、というときは直してくれるタイプを塗る、といった感じ。

【参照】

おすすめリップクリーム2013
おすすめリップクリーム2011
くちびるのケアについて
切れてしまったくちびるには

練習

口笛の練習や上達の方法は、いまだ他の楽器ほど一般に確立されていない。練習して上手くなるの?という人さえいるが、音楽的なところは他の楽器と共通することがほとんど。加えて、歌の要素もあり、器楽の要素もあり、口笛独自のことも多いが、教えられる人は極めて少ない。

【参照】

上達への道のり
くちぶえの音出し、最初の一歩(クゥーフー法)